気候変動に起因する日本の海洋保護区(MPA)内の生物種と生息域の変化に関する調査
日本では、海洋環境の変化により、生物種やその生息域が従来の生息域とは異なる海域に移動する傾向が強まると予想されています。また、日本には、国立公園制度や自治体が管理する保護区、漁業権区域が組み合わさった複雑な海洋保護区(MPA)システムが存在します。こうしたMPAの現状に関する情報提供と、管理者間における連携の強化を目的として、今回の調査チームはMPAシフトを使用します。これは、生態学、定量解析、環境DNA(eDNA)、保全生態学といった各種の定量的手法を統合し、以下の機能を備えたツールです。
- 熱帯種の温帯海域への移動を中心に、生物種の高緯度への移動を定量化する
- 生息域と生物種の変化の解明
- 異なるMPA間で行われている共同管理(またはその欠如)の実態に関する把握
- 関連省庁、地方自治体など地域のステークホルダー、漁業協同組合、地域コミュニティなどと協力し、日本のMPAに共通の気候変動適応策を提案
情報提供および管理
日本の国立公園内の海域では、厳密な規制が適応された保護区はわずかで、大半は緩やかな規制が適応されています。各地の保護区や漁業権区域の多くは、地元の漁業協同組合が指定する禁漁区に見られるような、自主規制によって管理されています。MPAシフトのプロジェクトを通じて、調査チームは、国や地方自治体、漁業協同組合、地域コミュニティ、その他の海域事業者、NGOなどと共に課題を整理するとともに、調査活動を行い、プロジェクトから得られる成果の最適な活用方法について検討します。また、共同で調査を行うことで、調査チームは、国内のMPAのネットワーク化によって国と地域社会が共同で取り組むMPA管理を促進し、国の海洋気候変動関連政策に情報を提供することを目指しています。
調査チーム
- マリア・ベガー、リーズ大学(英国)
- ジェイムズ・D・ライマー、琉球大学(日本)
- 中野恵、公益財団法人日本自然保護協会
- アレックス・ダンブレル、エセックス大学(英国)